ようこそ『The Ark』へ

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当ブログでは、不可思議な小説、童話的な小説をおいております。
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それでは、どうぞごゆるりと。。。


since:2006.12.02

糸綴じの本:目次

下に行く程新しいです。

■単発作品
「柵の向こう側」
「白イ花」
「りんご箱」

■異端見聞
「異端見聞:狐雨」
「異端見聞:フミキリ」

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- | 2011.02.18
私はあの人が大好きだから、猛烈にアタックして、向こうも根負けして結婚したの。
毎日あの人のために食事を作って、掃除をして洗濯をして。
だからって女には手を抜いてないのよ。
ちゃんと毎日お化粧して、お洒落にも気を抜かない。
だからかしら?あの人はいつも優しい。

幸せの階段を昇り続けているつもりだったわ。
だって幸せだから。

でも知ってしまったの。
贅沢で美しい生活をする度に、借金が膨れ上がっていたこと。
あの人が優しいのは、他に女がいる事を隠すため。

ねぇ、この階段は上に伸びてるの?下に伸びてるの?
ねぇ、私は昇っているの?降っているの?

どっちが上か下か判らない。

パピルスの1片 | 2007.03.24
私は殺したい程あの子が嫌いだった。
殺せるものなら殺したいと思っていて、ある日、偶然夜道であの子と出会った。
向こうは気付いていなくて、私は偶然包丁を持っていた。
絶好の機会だったが、はたと思い直した。

あの子には、あの子を大好きな人がいて、あの子を殺したら復讐されるんだろうな。
そうして私が殺されたら、私を好きなあの人が、あの子を好きなあの人に、復讐をするんだろう。
あの子を好きなあの人を愛してる人が、私を好きなあの人にきっと復讐するだろう。

ああ、いつまでも憎しみの連鎖は止まらない。
それなら、ここで止めておこう。

私は包丁をしまい、踵を返す。
すると、背中に熱い衝撃が走って、思わず振り返った。
あの子が、包丁を持って笑っていた。
せっかく、憎しみの連鎖を止めたのに。
私を好きなあの人が、あの子に復讐をするんだろう。
そうしてあの子を好きなあの人が、私を好きなあの人に復讐をするんだろう。
止まらない。
いつまで経っても止まらない。
それがなんだか悲しくて、涙が零れた。

パピルスの1片 | 2007.03.22
白と黒と黄色のえのぐ。

白を多めに混ぜたけど、白くはならなかった。
黒を多めに混ぜたけど、黒くはならなかった。
黄色を多めに混ぜたけど、黄色くはならなかった。

どんな分量で混ぜても、同じ色にしかならなかった。

パピルスの1片 | 2007.03.21
「今日お誕生日ですよね。おめでとうございます」
その後輩は、部活動が同じだった。
ある晴れた日の放課後、校舎と体育館を結ぶ渡り廊下で呼び止められ、少し大きく膨れた袋を渡された。
「あ、ありがとう」
紙とも布とも言い難い素材の袋が、赤いテカテカのリボンでキュッと口を縛られ、造花もくっつけられている。
プレゼントをその場で開けるのは礼儀だから、持っていた鞄を床に置き、リボンに手を伸ばした。すると彼女は、笑いながら、
「先輩、明日が何の日か知ってます?」
にこやかだが、好きになれない笑顔だった。
「いや?」
素直に答えた。
「私の誕生日なんです」
「ふーん」
答えながら、テカテカのリボンを解いた。
彼女の笑顔は相変わらず気に入らない。
そう思っていたら、真っ暗な世界に一人きり。
あれ。
空は明るい。
見上げたら、ギザギザに切り取られた空があって、あの気に入らない笑顔が覗き込んでいた。
「ありがとう、先輩」
「おい、どういうことだ!」
「どうって、そのままですよ」
上からこちらを覗き込む、楕円の瞳がへの字に曲がった。
「素敵なプレゼント、ありがとう」
ギザギザに切り取られた空が萎んで消えた。

パピルスの1片 | 2007.03.20
ひとりぼっちが寂しいから、誰かと繋がろうと、インターネットで見つけた掲示板に書き込んだ。

「誰かお話しませんか」

メールがきた。

「お話しましょう」

他愛もない会話を続けた。
学校の事、家族の事、つまらない日常と、見えない未来のこと。
寂しくはなかった。
でも、つまらなかった。
そして、そのうち寂しさが増してきた。

インターネットで見つけた掲示板に書き込んだ。

「誰か遊びませんか」

何通もメールがきた。

「一緒に遊びましょう」

指定の場所にみんなで集まって、ご飯を食べて、他愛もない会話を続けた。
寂しくはなかった。
楽しかった。
でも、満たされなかった。

繋がったように見えただけで、繋がっていなかったんだ。
ひとりぼっちでわんわん泣いた。

パピルスの1片 | 2007.03.18
この世で一番無残で残忍な、もっとも恐ろしい残虐な殺し方とはなんだろう。
死とは、全てに於ける希望を絶たれるもので、全てに於いて朽ちるのが普通である。
それを踏まえた上で、残虐な殺し方を考えると、どうなるのか。
よく、ホラー映画で手足を切断だの、鋼鉄の紐で縛り上げるだの、眼球に針を刺すだのあるが、それらはただ痛いだけで、残虐に見えるだけである。
恐ろしいとされる犯罪、殺し方は、一見残虐な、最終的に死を与えたものが該当するようだが、それは果たして本当の残虐な殺し方かどうか。
よくよく考えれば、死そのものは残虐な殺し方から遠くなる気がする。
何故なら死は肉体からの開放であり、脱出であるからだ。
殺すという行為は、死を与えることだが、肉体に死を与えては、相手を残虐な痛みから逃す事にはならないだろうか。
凄まじい暴行を与え続けると、人は死という開放を望む。
それは、希望を断つことが目的である殺戮から、離れている事になるだろう。
前述した通り、死とは、全てに於ける希望を絶たれるもので、全てに於いて朽ちるのが普通である。
卒ることは始まることであり、そこに微塵たりとも希望がないことは有り得ない。
ならば、もっとも残虐な殺し方はなんであろう。
私が思うに、生かす事であると考える。
終わりの知れない肉体への苦痛と、心に考える感情すらも砕く責め苦を与え続け、死という逃げ道すらをも断つ、それが一番残虐ではないだろうか。
しかし、ここには一つ穴がある。
壊れるという現象だ。
壊れてしまうと、あらゆる苦痛が快楽になり、それを楽しみ始める。
それはある種の逃げ道であるが、それを断つ手段はない。



「駄目だ。結論が出ない」
結論までしっかり書かなければならないレポートの提出期限は明日だ。
なぜこんなレポートを書き始めたんだ。
始めの方を読んでみる。


先日、母方の祖母がなくなりました。
死因は通り魔に刺され、出血多量。怒りを覚える死因です。
そしてこれを機に「死」とは何か、特に「殺す」という事について考えました。


理由にインパクト感じたからか。
それとも残虐な文章を書きたかったからか。
どちらにせよ、これじゃダメだ。

パピルスの1片 | 2007.03.15
雨の日には外に出て、アレを探す。
よぉく見ていないと見つからない。
空の彼方から落っこちて来るアレ。
おじいちゃんは
「ホントはみんな見えてるんだけど、気付いてないんだよ」
と言っていた。
名前は教えてくれなかった。
アレ、とだけ言っていた。
何なのか知りたくて、雨の日も晴れの日も外に出なかった私が、アレの正体を知りたくて、外に出ていくようなった。
外に出させる為の、おじいちゃんの嘘だったのかな。
でもあるような気がするんだ。
アレ、が。
たまにおじいちゃんと一緒に外に出て、アレを探した。
結構楽しかった。疲れたけど。
だから嘘でも本当でも、どっちでもいいんだ。
見つかっても見つからなくても良かったんだ。

雨の日には外に出て、アレを探す。
見つかっても、見つからなくても良いんだ。
いつまで経ってもアレが何か分からないけど。
それでいいんだ。

パピルスの1片 | 2007.03.14