ようこそ『The Ark』へ

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since:2006.12.02

糸綴じの本:目次

下に行く程新しいです。

■単発作品
「柵の向こう側」
「白イ花」
「りんご箱」

■異端見聞
「異端見聞:狐雨」
「異端見聞:フミキリ」

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- | 2011.02.18
そんなある日、少女は青年に告白した。

「同じ学校に通っている男の子にね…」
少女は、少年に愛の告白を受けた事を告げた。
「それでね…」
愛する青年のいる少女は、少年に青年の存在を告げた。
「だけどね…」
少年は少女を諦めてはくれなかった。
「だからね…」
一度だけの接吻で、諦めてもらう事にし、諦めてもらった。

少女は申し訳無さそうに、そう告げた。


「なんて事を!!」

青年が叫んだ。
「一度とはいえ、その身を他人に捧げたのか!」
「口付けだけよ。軽く触れる程度の…」
少女は弁明したが、青年は怒りに狂い、みるみるとその形相を変えていく。

「不貞なる女め!君は…!」

君は、僕だけのモノなのに!

青年の手が、少女の首に伸びる。

「やめて!!」

少女の叫び声。
青年の顔は、怒りから少しずつ、笑みへと変わっていた。
手に込められる力は徐々に強くなり、少女の頬が青ざめ始めた。

「…あぁ…っ!」
悲鳴に似た、息の漏れる音。


少女は、青年をとても愛していた。
青年は、少女をとてもとてもとても愛していた。


首を絞める、その大きな手を非難するように掴んでいた小さな手は、力無く離れていった。

少女の薔薇色の唇は紫陽花のような紫に染まり、白い涎に汚れていた。
透けるように美しい肌は、背筋の凍るような色に変わり、ビロードのように流れる長い髪だけが艶めいていた。

「あぁ、最初から、こうしていれば良かったんだね」
青年の顔に、喜色満面の笑みが浮かんだ。
指先で、少女の口の端に付いた白い涎を拭き取ると、青年は冷たい少女の唇を貪る。
綺麗に締め上げられた少女のコルセットの紐をなぞるように腰に手を回し、きつくきつく抱き締める。

その腕に、少女を、本当に手に入れた事実を、噛み締めるように。

虚空を見る青玉石の瞳。
寒々しくも美しい色の肌。
物言わぬ唇。

青年は、少女を抱え、椅子に座らせた。
取っ組み合いで乱れた衣服を髪を整え、少女に再び口付ける。


あぁ、コレで、君は永遠に僕のもの。
誰にもやらない。
誰にも触れさせはしない。

少女は、青年を×××××××。
青年は、少女をとてもとてもとても愛していた。


***


夜の帳が降りる頃、少女の両親が青年の家を訪れると、そこには誰もいなかった。
こじんまりとした木の家には、小さなベッドと、倒れた椅子、粗末なチェストに、何もないテーブル。
人の気配は微塵も無く、あたかもそこに人など元からいなかったかのように、静寂なる息遣いが漂うばかり。

愛しあっていた少女と青年が消えた。
二人で何処か遠い街に行ってしまったのだろう。
街の人々は囁いた。

少女の母親は毎日のように泣き明かし、父親は宝である娘を連れて居なくなった青年を血眼になって探し回った。
見つからない二人を、少女の両親は片時も忘れなかった。
人を使って国中を探させたが、見つからない。
神に愛される程美しい少女と見窄らしい青年を、誰も見つける事が出来なかった。


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D伯爵の童話 | 2006.12.29

- | 2011.02.18