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糸綴じの本:目次

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■単発作品
「柵の向こう側」
「白イ花」
「りんご箱」

■異端見聞
「異端見聞:狐雨」
「異端見聞:フミキリ」

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- | 2011.02.18
私が彼に出会った時の事は、よく覚えていない。
いつの間にか、彼、「D伯爵」を知っていて、こうして彼の家に呼ばれ、食事を共にするような仲であった。

伯爵の家は、まるで中世を思わせるような物で全てが整えられていた。
室内暖炉に、アンティークな家具達、古めかしい絵画と額縁。
食事の際に使ったフォークやナイフ、皿やコップに至るまで、かなりの年代物と思われる物ばかりだった。

食事が終わると、彼は暖炉の前の揺り椅子に座り、心地よい食後の一服を楽しんでいた。
彼の煙草もまた今どき珍しいパイプ煙草だ。
私は側のソファに座り、美味しいものでいっぱいになった胃袋を服の上からさすっていた。

窓の側のチェストの上に、可愛らしい人形があるのに気付いた。
やはりアンティークなようで、時を感じさせる少女人形だった。
私はそれを手に取り、
「伯爵、この子の名前はなんて言うんですか?」
と聞いてみた。

伯爵は何にでも名前を付けているヒトだった。例えば、今伯爵が座っている揺り椅子にさえ名前が付いている。たしか「キング」とか言っていた。

伯爵は煙りを燻らせ、目を細め、
「あぁ、その子は『リデル』というんだ」
伯爵が手でこちらによこせ、という合図をしたので、私は「リデル」という少女人形を渡した。
「美しい子だろう」
伯爵が優しく撫でている。よほどお気に入りなんだろう。

「あぁ、そうだ」
思い付いたように、伯爵が声を吐き出す。
「人形の話をしてあげよう」

暖炉の中で、火種がまるで拍手のようにパチパチと音を上げた。


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D伯爵の童話 | 2006.12.04

- | 2011.02.18